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「遥かに仰ぎ、麗しの」分校系考察 [かにしの]

「遥かに仰ぎ、麗しの」分校系考察
本校系は考察1を参照
ここからは分校系について書いていきます。
分校系は本校系ほど綺麗にはまとめられませんでした。
グダグダ文になってるところも多いけどこれが現状での自分の限界。分校系

まず感じたことは…
分校シナリオには本校シナリオにあった救済を主軸に考えるとズレが生じる
みやびを最初に攻略したせいもあってか、最初自分はその点から考えてた面があって、そう考えるとどうしても物足りない。どうしても本校と比べて盛り上がりに欠けてしまう分校シナリオと捉えてしまう。
だけど、それだけで語れないシナリオの巧さを感じたのはどうしてか?

そう、分校の丸谷さんのシナリオを読み解くには他の攻略ルート絡みのもっと大きな視点を持つ事が必要だったのだと気付く。
あとになって思えば、立ち絵すらないサブキャラが多く登場することからも気付くべきだった視点ですが。
本校では主人公とヒロインだけの世界の話に執着しますが、分校ではそれに留まらないということ。
これは間違ってない視点のはず。


仁礼 栖香

各所でシナリオの不満が語られる栖香。
私としてはキャラクターとしては非常に擁護したくなるほど好みなので心苦しい。

仁礼栖香&相沢美綺については、時を刻まない時計を眺めてのXさんのレビューでほぼ完璧に語られているのでうちもそれに準拠している面が多いです。
一言でまとめた文を抜粋すると…
この2人の物語の凄まじい所は彼女達をどこまでも対照的に描いたことである。 作中で栖香はこんな台詞を呟く。 「あの人は、私という存在に対する、完全なアンチテーゼみたいな人でした。少なくともそう見えたのです」 この台詞ほど彼女達を巧く表している言葉は無い。


これには反論の余地もないと思った。
前振りが長くなったけど、これらを踏まえて解析してみました。


栖香の欠陥って実は第5話で既に描写されてます。

邑那「貴女は、他人の助けを借りることを覚えるべきだと思います」 邑那「弱音を吐かず、全てを自分で解決しようとする。それは欠点とは申せません。ですが、それでは解決できない問題はあると思います」

主人公が気付くわけでなく、最初は邑那さんが指摘しているところが、
欠陥を修正して導いていく本校の司とは全く別物だと思い知らされます。
分校の司は導くというより、一緒に考えるタイプともいえるのかな。

ぶっちゃければ他人の助けを借りようとしない話が続くので、栖香だけのシナリオを考えると読者が飽きてしまう感は否めません。
5話の野球、6話でのいろいろ雑用に使われてるところ、9話では家族の問題で司以外を拒絶。

司「野球をすればいいと思うんだ」 仁礼の目がすがってくる。救いを求めてくる。 いつも僕を助けてくれる彼女を、今は僕が助けなくちゃいけない。(5話)

ソフトボール大会ではじめて見た仁礼の表情。まるで助けを求める仔犬のようなまなざし。 あれ以来、ほっとけなくなって、出来る範囲でだけど手伝うようにしている。 なんでも引き受けて、なんでもこなしてしまえて、人に頼ることを知らない彼女。 そんな子をほっておけるわけがない。(6話)

栖香「仁礼の家は終わりだから、ひとりで生きろって」 もう仁礼が愚痴をこぼせる相手も、打ち明け話を出来る相手も、僕しかいないのだ、と。(9話)


11話・12話でようやく司を頼りに問題が解決の方向に向かったと思えば、13話でまた自分よがりの判断を繰り返す。
だって、栖香本人がはしなくも言ってたじゃないか、『司さんは私の事をいつも大切にしてくれます』と。 彼女は、僕に犯されることで、問題が解決される可能性を最初から考えてなどいなかったのだ。(11話)

美綺「『頑張りましょう』って言ったんだよっ。すみすみがさアタシに、このアタシに、自分から話しかけてくれたんだっ」(11話)

栖香はほほえみを浮かべたまま、僕に歩み寄り背伸びをした。 刹那。くちびるにやわかくあまい感触がしすぐ離れた。 手のひらに、硬くて冷たくて小さな物が押しつけられた。 栖香「お別れです」(13話)


これは栖香が主人公の欠陥にいつまで経っても気付かないからと捉えるべきだが、いい加減同じことを繰り返し成長をしない栖香にイライラしても仕方ないかなとは思います。

僕が栖香を見捨てたりしないと感じていても不安なんだろう。 なぜなら。僕らには何か約束とか契約とか誓約がないから。 なぜ僕らは、なにも約束しなかったんだろう? 栖香は家に囚われていたからだし、僕は……。(12話)


最終的には14話で愛を確認して解決するという流れ。
しかし、結局主人公の欠陥には気付かないまま終わっています。

これで解決しちゃっていいのか?という命題に答えるには
美綺ルートでのやり方でライターの考えを読み解く必要がありそうだ。
美綺「たったひとこと」 美綺「アタシが欲しいのはそれだけ」 美綺「でも、それは、とても欲の深い願いなのかも知れない」(美綺14話)

栖香ルートでも14話でようやく告白する。
司「栖香。好きだよ。判っているだろうけど、教師が学院生をじゃなくて、一人の男が一人の女を好きなんだ」(14話)

決定的に人を頼る、あるいは頼ってもらうには、SEXや態度だけでなく、
きちんと言葉で「好き」だということを表現するべきだということを言いたいのでしょう。


これはこれで解決ですが、どうしても腑に落ちないのが
栖香は結局、主人公の欠陥には気付かないまま終わっているところ。

これが見方によってはBADENDに見えなくもない、そういう視点もありかと思いますし、自分もそう思うところもあります。この問題については自分の頭では解決不能なので、鼠の騙し討ちのあきねずみさんの視点を借りて締めたいと思います。

I can live, without roes. 物語がまぶしすぎて忘れそうになりますが、人と人の繋がりなんてそんなものでしょう。 誰しも心をまっさらにして相手に向き合えるわけは無く、そこには打算と妥協と甘えが在ります。 その隠し事を認め合い、目を瞑り我慢しながら、それでも人は他人を想うことが出来る。 それは形だけのように見えても、人は他人を蔑ろには出来ないから。 他人を想う気持ちがあるから繋がるのではなく、繋がりが在るから他人を想うことができる。 完璧なものはドコを探しても見つからないけれど、それでも 僕は薔薇が無くても生きていける。



蛇足
要するに栖香ルートでは栖香がようやく成長したところで終わっているのですよ。
そういう意味ではみやびに通じているのかもしれないけど…。

贅沢を言えば、将来訪れる可能性のある主人公のトラウマの問題に対して、人を頼って解決する栖香の姿を見たかったのです。そういう成長を見せてくれないことを考えると、このゲームはやっぱりいじわる(ぉ

Xさんと同様の意見になるけど、成長した断片は美綺ルートで垣間見れるんだけど、なんでこれを栖香ルートで見せてくれないのか(栖香エピローグでわずかに説明はありますが…)と小一時間文句を言いたいぞ?
↑美綺ルートでは香奈という友人ができたり、テスト勉強を忘れるほど調査活動のために動いていたりしたのに…。

それだけ栖香というキャラが好きなだけかもしれませんが、そういう主観は排除できないタチなので許してください。
シナリオの構成のために犠牲を喰らったと考えるのが妥当。
頭ではわかっているんだけど、こんな可愛いキャラが、アレ以上に本当に可愛くなるところをもっと見たいと思うじゃないですか。




相沢 美綺

美綺に関しては後日にみさきち派の独り言以外の何かのSu-37さんが大いに語ってくれるものと信じてますが、うちでは普通に私見を述べておきますね。

美綺ルートが真にオープニングの題材に対する解答をテーマにしたシナリオにして、徹底的に栖香と対比させたシナリオ。
声「あなたは幸せになれやしないわ」 あの時、僕は世界の果てにいた。(1話)

本校ルートと似たテーマだけど、本校はどっちかというと救済の色が強くて、この美綺ルートに関してが本当の意味で一つの「幸せ」に対する答えかと思うんですよね。(本校ルートではこの「幸せになれやしないわ」って台詞を重要視してなかったこともあります)

相沢美綺という人間は、行動は子供っぽく見えるけどそのくせ精神面が大人で他人への気配りが上手なところにその魅力があるのだと思います。
この性格自体も栖香とは逆ですよね。

5話ではみやびに気をかけ、6話では奏を気にかけたエピソードが語られ、7話でそれを確かめることができる。
美綺「ホームチームが負けてても楽しそうに歌うんだ。きっとあんな雰囲気ならみんな参加すると思うよ」(5話)

奏「美綺は、私が引っ込み思案だって知ってたから、強引な手を使ったんです」(6話)

相沢は僕が知っているとおりの相沢だった。それは身の破滅が迫っているこの時ですら変わらなかった。 ちゃらんぽらんに見えて慎重で、いい加減に見えるクセに常に他人を気に掛ける。本当の危険には他人を巻き込もうとしない。(7話)

そして親友になり、さらに家族問題を解決し、更なる信頼を得て次の段階。すなわち親友→恋人へ。

恋人になったあとにも問題が起こるのですが、12話で美綺の無理を司が解決し、14話で司の無理を美綺が解決するという綺麗な流れです。お互いにとってそれは最高の相棒であることを示せていると思う。
司「美綺は最高の女の子で、最高の相棒っていう、僕にとっての究極兵器なんだよ」(12話)

そして美綺の凄いところをもう一つ挙げると、その性格で学院全体にはびこる問題の解決法の一つを示しているところです。

この学院の本校組と分校組の間にある無形のでも冷ややかな障壁を取っ払うなんて、僕の相棒以外には誰も出来なかったって。(エピローグ)

本人も無意識的ではあるけど、みやびルートですら成し得てない一つの理想的な学院の方向性を示しているわけです。
それはみやびルートでは救済を前面に出しているけど、美綺ルートでは自分も幸せであることを前面に出している方向性の差にあるのかな?と思っています。

美綺「みんな、さいっこうの思い出をありがとうっ」(エピローグ)


もう一つの見せ所は栖香と美綺の対比について
例えば、
・栖香には約束や誓約や契約が無く、美綺には親友の誓いがあった。 ・栖香は問題を自分ひとりで解決する傾向があるのに対し、美綺は他人を気に掛けることができる。 ・その結果、栖香は司の問題を取り除くことができず、美綺は司の問題を取り除くことができた。

美綺がこのような形(本人たちの幸せと学院全体の幸せが垣間見れる終わり方)で徹底的にHappyEndである以上、栖香のシナリオが徹底的にBADENDになりかねない流れになっているという考えには同調できるのです。

栖香シナリオを最後に幸せになったと捉えるか、最後まで幸せとは言えないのではないかと捉えるか。
あるいは、美綺は二人だけでなくみんなの幸せを見出した終わり方で、栖香は二人だけの幸せを見出したという考えもありかもしれません。

答えはライターさんしか持ってないと思うのでそれぞれ個人の判断によるところでいいんじゃないかなと思ってます。と、いつの間にか栖香の話になってるのはご愛嬌(ぉ)




榛葉邑那

そしてシナリオのラスボス的存在邑那ルート。
ここでは、学院の暗部であるゲストの存在について触れると同時に、「好き」になるとはどういうことかという一つの考え方が提示されています。

暁「もしもだ、彼女の背後に何があろうとだ。裁くなよ」(6話) 世界は光の当て方で見え方ががらりと変わってしまうものなのだ。(13話)

メインテーマはこの二言だけで片付けられるわけだが。

暁「彼女がここにいる……というか入れられた理由がお前から見て、どんなに許せないものであろうと、裁くなってことさ」(6話)
祖父の忌み者になっていると知った11話。

それを邑那を美化して燕玲を悪者するという裁きをして解決した12話。

司が裁いてしまっていたとき、次の台詞から邑那の全てが語られる
邑那「愛するなら、私の全てを知ってからにしてください」(13話)
だから邑那は自分の醜悪な部分を語っていく。
決して許せないことをしていても、司は邑那の本当の優しさを知っている。
だから司は邑那のことを好きになった。
だから邑那を許してしまう。認めてしまう。


そして14話では祖父ですら裁いちゃいけない存在だったのだと暗示しているようで。

これは、何事も裁いてしまう栖香や、何事も裁かず慎重に物事を進めていく美綺の見直しにも繋がると思うのです。
裁いてしまう栖香には、美綺や両親の愛情でさえも間違えて、BADENDスレスレの方向に話を進めている。
裁かない美綺には、常に他人の感情に敏感で間違えず、徹底的にHappyEndになる方向に話を進めている。
栖香と美綺は、裁くとか光の当て方という言葉を使わずに話を進めているが。


丸谷さんのシナリオでは栖香・美綺→邑那と順序だてて恋愛論を発展させているようにも捉えられるかな。
栖香・美綺で「好き」ということは態度だけでなく言葉で表現するべきだと(言えない理由が主人公の過去にあるのは置いておきつつ)言い、その「好き」の意味は「人格・過去も含めて全てを愛する」と邑那さんシナリオでまとめています。
そしてその視点を持つには裁いてはいけない、光はいろいろな当て方があるのだということを知っているべきだと。


これこそ私の光の当て方であるわけですが…、他の人は邑那シナリオからどういう光を当てるのか…。
正直、自分の理解を超えてる話であると認めます。私にはこれが限界(台無し)




といった感じにまとめてみましたがいかがでしょう?
ていうかこれで完全に休みが潰れた自分ってどうなんだと…。

一言で言うと、

本校系のシナリオの流れは一定。だが盛り上がる。話が綺麗でわかりやすい。 分校系のシナリオの流れは不定。盛り上がりに欠ける。でも、全体を見ると、とても巧い話になっている。


だと言うことでいいと思います。
考察に挑戦するのはこれが初めてで、おそらく最後になるとは思いますが、ここまでつたない文を読んでくれた方はお疲れ様と同時に感謝。
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コメント 3

SBB

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楽しく読ませていただきました。
お礼に、俺の光の当て方の一部を置いていきたいと思います。
もし楽しんでいただければ幸いです。

殿子編
個人的に、ここでは軽く流されてしまった第7話の、地下通路でのこそが、かなり重要なのではないかと考えています。
「気づく」を第10話とされていましたが、俺はこの第7話こそが「気づく」であると考えています。
主人公の欠陥が割かし簡単に解決してしまうことも、殿子が自分と同じ恐怖を抱えているということを早い段階で知っているためであると思っています。

分校系
スミカのお話では主人公の欠陥が解決されていない、とおっしゃられていますが、自分はまた少し違う見解を持っています。
それは、「そもそも、分校系の主人公は、欠陥といえるほど大きなものを抱えてはいない」というもの。
軽くスルーされているのではなく、解決すべき欠陥がそもそも存在しないという意見です。

では、分校系の主人公が抱えているものはなにかといいますと、

「好き」という言葉を無意識に避けてしまう

というものであると考えています。

本校系編での司は、愛するということに関して、言葉だけではなく行動にも恐怖心を感じているとこが読み取れます。分かりやすい例だとみやびにキスをせがまれて、唇を避けたことなどでしょうか。

ところが、分校系編ではあっさりとキスそしてSEXへと進んでしまいます。
このことから、分校編の場合の司は、愛することそのものは恐れていないことが感じ取れます。
さらに、ユウナ編において好きだと伝える場面で、「どうしてもっとはやく言わなかったのか」という内容の自問をしています。そこにミサキ編で司が思い出すことを加味し、司が避けているのが「好き」と口に出すことであると結論したわけです。

この考えの場合、克服という点でなら3つすべてのシナリオで果たしているということができるでしょう。これが「欠陥というほど大仰なものではない」と考えている根拠です。なにせ原因の自覚すらなくとも克服できるくらいのものですから。欠点、という言葉ならばちょうどいいかもしれません。

余談ですが、ミサキ編で思い出した捨てられたときのセリフ。これは本校系編の場合には言われていないと考えられます。本校系編では、捨てられた際の記憶はハッキリしているようですが、それだけ壮絶な言葉をぶつけられたという描写もなければ、司が夢にうなされることもないですから。
by SBB (2007-02-27 03:29) 

ひと

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栖香に関しては、親密になると司の方から離れていくという状況の逆だとも言えるのではないかと。
司の歪みは本人は無自覚ですので、最後の「好き」で無自覚の間に克服されたと強引に解釈しています。
by ひと (2007-02-27 13:41) 

うぃんぐ

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お二方ともありがとうございます。
殿子の方は読解不足でした…。

一方の分校の方ですが、本校司と分校司が徹底的に別人と考えると、こういうことが当てはまりますね…。

そういえば恋人ができたけど親密になる前に別れるって表現も、本校でしか使ってなかったかもしれませんし。そうなると分校の司は、その部分の欠陥を問題にする必要はないということになるか。
by うぃんぐ (2007-02-28 00:33) 

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